雨の日こそ訪れたい京都の庭園があるお寺3選

雨の日の外出は億劫なもの。傘を差さなければならず、服も濡れ、外出が億劫に感じることも少なくありません。
それでも私は、梅雨の季節や秋の雨の日を少し楽しみにしています。それは雨の日にしか見えない京都の美しい側面を知ってしまったからだと思います。
今回は雨に日こそ行って欲しい、ゆっくりとお庭と雰囲気に浸れる京都のお寺をご紹介します。

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雨の日に見る庭園

晴れた日の庭園は、光と影のコントラストが強くなります。木漏れ日が地面に模様を作り、苔は乾いて色が沈みます。それはそれで美しいのですが、苔本来の発色を見るなら、実は雨上がりか雨の最中の方が圧倒的に良いのです。

水分を含んだ苔は深い緑になり、青もみじも晴天の日とは異なり色が濃く深くなります。さらに、雨音が庭園に独特の静けさを作ります。これは晴れの日には得られない感覚で、観光客の数が減ることもあり、静かに座敷に座ってひとりで庭と向き合う時間に浸れます。

つまり雨の日の庭園体験とは、「屋内にいながら、雨音と深い緑を独り占めできる時間」のことです。京都に長く住み、最近では京都の美しさを一番引き出すことが出来るのは雨だとすら思い始めている私がおすすめする3つのお寺をご紹介したいと思います。

①圓光寺― 苔・青もみじ・竹林を一度に

左京区一乗寺にある圓光寺(えんこうじ)は、徳川家康が学問所として開いた歴史を持つ寺院です。境内には入口のユニークなデザインの枯山水に始まり、「十牛之庭」があり、苔の絨毯と青もみじ、そして奥の竹林という京都のよいところを凝縮したようなお寺です。

ここの見どころは、なんといっても書院から眺める額縁庭園です。柱と鴨居が額縁のように庭を切り取り、座ったまま視線を動かすだけで、苔の緑、もみじや竹林の緑と様々な緑のグラデーションを楽しむことができます。雨が降ると苔の発色が一段と濃くなり、葉先から落ちる水滴の音まで聞こえてきます。

もう一つ、見逃されがちなのが入り口付近にある水琴窟(すいきんくつ)です。地中に埋めた甕に水滴を落とし、その反響音を地上の竹筒から聞くという仕掛けで、江戸時代に庭師たちが考案した音の演出装置とされています。雨の音に水琴窟の澄んだ音が重なる瞬間は、晴れの日には絶対に体験できません。

またこちらのお庭には可愛いお地蔵さんが隠れているので、お地蔵さんを探すことも忘れずに。

②宝泉院― 一度に二種類の景色を楽しめる額縁庭園

秋の宝泉院

大原は「京都の奥座敷」と呼ばれます。市中心部から離れた山あいの集落で、三千院をはじめとする寺院が点在しています。中心部に比べて人混みが少なく、空気も澄んでおり、気温も低いです。

その大原にある宝泉院は、額縁庭園の完成度において特に印象に残る寺院です。樹齢700年と伝わる五葉松が庭の主役で、その枝ぶりが柱の額縁の中に収まるよう計算されています。

宝泉院のもう一つの特徴は、庭を二つの異なる方向から鑑賞できることです。一つの座敷から一方向だけを眺める寺院が多い中、視点を変えることで同じ庭が違う表情を見せてくれます。これは他の寺院ではあまり見られない構成だと思います。

正直に言うと、この庭は一度座ると立ち上がるタイミングを失います。お茶とお菓子をいただきながら庭を眺めていると、時間の感覚がなくなります。雨の日は特にそうで、訪れる人も少なく、静かに庭と向き合うことができます。ここにも水琴窟があり、圓光寺とはまた違う音色を聞かせてくれます。

大原という立地ゆえに、市中心部の観光ルートには組み込みにくい場所です。だからこそ、時間に余裕を持って向かう価値があります。

すぐ近くには、苔庭の美しさで知られる三千院もあります。宝泉院とあわせて訪れる方も多いのですが、三千院は庭園内を歩いて散策するスタイルのため、雨具の準備をしっかりしておくことをおすすめします。

③蓮華寺― 八瀬の小さなお寺

八瀬にある蓮華寺は、ここまでの二寺に比べると規模が小さい寺院です。だが、その小ささが落ち着きにつながっています。畳の上に座って庭を見ていると、視界に入る情報が少ない分、雨音と緑だけに意識が向いていきます。

ここも書院の柱と障子をフレームに見立てた額縁庭園と、池泉観賞式の庭園を持っています。庭園には鶴亀の島が配されており、四季折々の表情を見せてくれます。座って眺めていると、規模は小さくても作り込みの密度を感じます。

本堂に描かれた天井の龍も見逃せないポイントです。力強い筆致で、座敷の静けさとはまた違う緊張感があります。

派手さはありませんが、静かに座っていたい方にはむしろこちらの方が合っているかもしれません。観光客の数も少なく、自分のペースで滞在することができます。

3つの寺院に共通すること

三つとも共通しているのは、「庭を見るために作られた座敷がある」という点です。これは偶然ではありません。日本庭園、特に書院造りの座敷から眺める庭園は、もともと額縁の中に絵画を収めるような発想で設計されています。柱と鴨居が枠になり、庭そのものが一枚の絵として完成するように計算されているのです。

晴れの日はこの「絵」が太陽光で平面的に見えがちですが、雨の日は湿度によって緑の階調が増し、奥行きが出ます。庭師たちが本来意図した姿に近いのは、実は雨の日なのではないかと私は思っています。

訪れる前に知っておきたいこと

雨の日に庭園を訪れる際、いくつか知っておくと良い点があります。

  • 水琴窟は水量によって聞こえ方が大きく変わります。雨の強さや水の流れ具合によって音色が変化するので、しばらく座って音の違いを楽しんでみてください。
  • 苔の保護のため、庭園内の指定された通路以外は歩けない寺院がほとんどです。お庭を歩く際は足元の苔に十分注意してください。
  • 大原(宝泉院)や八瀬(蓮華寺)は市中心部からバスで30〜40分程度かかるため、半日の予定を組むのが現実的です。
  • 宝泉院の近くにある三千院は歩いて散策するスタイルの庭園のため、合わせて訪れる場合は雨具の準備が必要です。

天気予報で雨が続くと知ると、観光の予定を変更したくなる気持ちはよく分かります。ですが、苔ともみじ、そして雨音を本当に楽しみたいなら、雨の日こそ動くべきだというのが、20年近くこの土地で庭園と神社仏閣をめぐってきた私の感想です。

京都の文化をもっと深く知りたい方へ

ここで紹介した3つの寺院は、いずれも個人で訪れることができます。ただ、座敷でお茶をいただきながら庭を眺める時間に、その庭がなぜこの設計になったのか、苔の手入れがどう行われているのか、水琴窟の仕組みはどうなっているのか——そうした背景を知ると、同じ景色がまったく違って見えてきます。

京都には、こうした庭園や寺社、年中行事一つひとつに、長い歴史と理由があります。実際に京都を訪れて、その歴史に触れながら、茶道や和菓子作り、坐禅といった文化を自分自身の体で体験してみませんか。

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